藤堂 隼人はごく普通の学園生。
少し違うところがあるとすれば、両親が遺産として残したマンション群……。
いわゆる「団地」のオーナーであり、管理人的役割をすることで生活を立てていることだった。

ある日、住人の募集をかけることになったのだが、そのパンフレットの文面を考えているときに幼い頃の思い出が蘇る。

「わたしね? 団地妻になるのが将来の夢なの」

隼人にとっては幼い初恋の相手の言葉だった。
なぜ思い出したのか分からないが、勢いに任せて冗談任せに募集欄に書いてみた。

『団地妻募集中。お相手は、マンション管理人・藤堂 隼人

不況のせいか、入居者の集まりも今ひとつ。
もう一度広告を出そうとした矢先に隼人の部屋の電話が鳴る。

「あの。チラシを見てお電話したんですが」
「はい。今なら空きはありますよ」

入居希望者が現れたことに喜ぶ隼人
だが、それに続く言葉に隼人は言葉を失う。

「よ、よかったです。これで、わたしの願いが叶います」
「へ?」
「不束者ですがよろしくお願いします。これで、わたしも念願の団地妻ですね!」

冗談で書いた文言にまさかの希望者。
とりあえず、会ってみようと思う隼人だったが、待ち合わせの場所に現れた少女に驚きを隠せない。
転校で分かれてからもう10年……。
だけど出会った瞬間に忘れ得ぬ面影から隼人は驚く。

それは、紛れも無く、あの初恋の少女だったのだ。