世の中には、2種類のお兄ちゃんがいるという。

現実の妹に絶望し、ゲームでも妹には萌えられなくなったお兄ちゃん。

そして現実の妹に絶望したからこそ、ゲームの世界で理想の妹を求めるお兄ちゃん。

この物語は、そのうちの後者。
現実の妹に「キモイ」「ウザイ」と虐げられ、美少女ゲームの妹に理想を求めた、
どこにでもいる平凡なお兄ちゃんの、血と汗と涙とその他もろもろの汁を元に綴った記録である。

主人公・大泉涼は、これまで数々の美少女ゲームで妹を愛してきた生粋のお兄ちゃん。
そんな彼が、とあるゲームの妹に心を奪われた。

大好きな声優、大好きな原画家、そしてお兄ちゃんのためならちょっとエッチになってしまう妹。
だが、現実(リアル)の妹であるはそうしたゲームに熱中する兄を、汚物を扱うような目で見る。

ゲームの妹――麻衣ちゃんは、兄をそんな目で見たりしない。
一緒にお風呂へ入ったり、手をつないで登校したり、すべてが現実とは違う。

そんなある日の夜、涼は不思議な夢を見る。
可愛い声で「お兄ちゃん」と呼ぶその子は、先ほどまでゲームで愛し合っていた理想の妹、麻衣であった。

そして翌朝、さらなる不思議現象が涼を襲う。

「お兄ちゃん、起きて。ねえ、お兄ちゃん」

軽く体を揺さぶられ、
重い瞼を開くと、そこには――

「おはよう、お兄ちゃん♪」
「ま、麻衣ちゃん!?」

馬乗りになって自分を起こしていたのは、ゲームのキャラそっくりの女の子であった。